各種健診等保健事業
● 第3期データヘルス計画の概要
データヘルス計画の背景
 世界に冠たる国民皆保険と高度な医療水準によって、本邦は世界一の長寿国となり、団塊の世代が後期高齢者医療制度に全入する2025年以降、高齢者数が量的最大となる2040年代、また率的最大となる2070年代まで、本邦は未曽有の超高齢社会を経験することになります。
 これに対処すべく、平成26年3月に「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」(平成16年7月30日厚生労働省告示第308号)に基づき、当健康保険組合においても、現状を把握したうえで必要に応じて事業の見直しや新規の企画を検討し、健診・レセプト等のデータを有効活用することで、医療費の削減はもとより、保健事業の実効性を高めていくことを目的とし、平成27年度から平成29年度を第1期、平成30年から令和5年を第2期とする「データヘルス計画」を策定し、保健事業の効果的な実施に努めて参りました。
 
第2期データヘルス計画を踏まえた現状と課題
   当健康保険組合においては、被保険者の平均年齢が全体的に高く、これにより一人当たり法定給付費も生活習慣病において高額となる傾向にあります。
 なお、慢性腎不全による人工透析には1名あたり年間600万円ほどの医療費が発生しますが、当健康保険組合では人工透析者が多く、医療費負担は莫大なものです。新規の人工透析を防止するためには、健康リスクがある方の未受療及び血糖値のコントロール不良の方への対策は喫緊の課題です。
 また、満40歳以上の方は、糖尿病、高血圧、高脂血症等の生活習慣病を患うリスクが若年者と比して高いため、年に1回特定健康診査の受診が義務付けられており、また健診結果の良くなかった未治療の方については特定保健指導の実施が義務付けられておりますが、当健康保険組合では特定健康診査の実施率が70.5%、特定保健指導の終了率が6.2%と、ここ数年上昇しているものの、いまだ低い受診率で推移しております。とくに被扶養者の特定健康診査健診実施率は27.5%(健保連平均46.1%)で、多数の方が自身の健康状態を把握できていない恐れがあります。
 なお、特定健康診査及び特定保健指導の実施率によって後期高齢者支援金への納付額が加算減算されますが、現在の実施率水準では将来的に納付金への加算が発生する可能性があるため、実施率向上について、緊急に取り組む必要があります。
 メタボ該当者の減少率も健保連平均より低く、さらに循環器系、内分泌系疾患、また新生物の1人当たり医療費は健保連平均より高い状態です。特に生活習慣病系疾患では糖尿病・高血圧・人工透析で健保連平均を大きく上回っています。
 全体的に肥満者の割合が高く、受診勧奨基準値以上の方が多い状態です。服薬者は健保連平均より多いため、医療費は多く発生しますが、一方で医療の適切な介入が期待できることもあり、マイナス要因だけではありません。
 血圧・血糖値・血中脂質については、全年齢階層で概ね平均を上回っております。
 これらの数値が高いことは、人工透析・脳卒中等の発症リスクにつながります。また、ハイリスクが重複している方がおり、コントロール不良対策等が必要です。
 後発医薬品使用率は概ね80%を超えておりますが、この水準を維持改善する必要があります。
 当健康保険組合は平均より喫煙率が高い状況です。喫煙は高血圧の原因となり、高血圧域では生活習慣病重症化のハイリスク要因となるため、高血圧域での喫煙者への重症化予防、適正血圧域での高血圧移行予防が必要です。
 運動習慣者は全国平均を下回っており、生活習慣病のリスク者が多いことからも、運動習慣の醸成が必要です。
 当健康保険組合に提出される傷病手当金支給申請書のうち、概ね50%がメンタルヘルス関連の疾患であるため、対策が必要です。
重点的に取り組む事業
  医療費抑制と受診率向上に特に効果があると考えられる以下の事業について注力して取り組みます。
  (一)事業主との協働事業(コラボヘルス)及び健康企業宣言
   当健康保険組合では、加入員の皆さまの健診結果等を総合的に分析し、各種重症化予防事業を実施しており、重症化リスクの特に高い方に、様々な形で重症度をお知らせし、医療機関の受診や保健指導等をお願いしております。
 近年、電気工事業界でも人手不足が深刻であると言われておりますが、技術と経験を兼ね備えた社員が健康に働けることは、経営の「健康」にも繋がります。
  ■事業主との協働事業(コラボヘルス)
  @事業所訪問事業     健康保険組合事務局と医療専門職が事業所を訪問し、医療費の傾向や健診データ、職場の健康づくりへのアドバイス等の情報提供を行います。
また、健康経営に最も効果があると考えられる特定保健指導について実施を勧奨いたします。
  A職場の健康づくり支援  健康器具購入補助や、感染症対策等、職場の健康づくりを支援します。
  ■健康企業宣言
  @健康企業宣言事業    健康保険組合連合会東京連合会等が発足させた健康企業宣言東京推進協議会が実施する健康企業宣言に参加します。
事業主様に当健康保険組合の各種保健事業をご活用いただくことで、健康経営として実情に合った職場の健康づくりに取り組んでいただきます。
  (二)腎不全重症化予防プログラム
   一人当たりの医療費が高額である疾病の一つに「人工透析を必要とする慢性腎不全」が挙げられます。この慢性腎不全にかかるリスクが高い対象者を健診結果より抽出し、医療機関未受診者へ受診勧奨をいたします。
 下の図は、健診結果の経年比較で悪かった人が、医療機関を受診せず治療を行わなかった場合、糖尿病からエスカレータ式で腎不全、慢性腎不全に進行し、人工透析を必要とするに至る状態を示し、人工透析に至る前に早期治療と維持管理によって予防することが重要であることを表現しています。
 したがって、健診結果リスク者及び糖尿病治療中断者が適正な医療を受けずに、一足飛びに重症化しないよう、また、治療中のコントロール不良者が漫然と重症化することのないよう、予防に取り組みます。
 さらに、人工透析重症化予防以外に脳卒中、心筋梗塞等を引き起こす恐れのある高血圧・高脂血症が疑われる方についても同様に抽出し、重症化予防に取り組みます。
  ■腎不全重症化予防プログラム
  @受療勧奨        前年度の健診データと健診実施後の対象レセプトを突合し、健診結果より重症化の基準に該当し、レセプトデータとの突合分析から医療機関へ受診がない者に対して医療機関への受診勧奨を行い、適正な治療を受けていただくため通知書を送付いたします(個人あて)。
効果は送付の翌月以降のレセプトにて測定します。
次年度以降は、未受診のリスク者を放置することなきよう、再勧奨を行うとともに、抽出条件について検討したうえで実施いたします。
  Aコントロール不良者対策 前年度の健診データと健診実施後の対象レセプトを突合し、対象者を抽出し、保健指導の案内書を送付します(個人及び事業所あて)。対象者から保健指導申込受付後、委託業者による保健指導を実施し、適正な服薬、生活習慣等を細やかにケアし、血糖値の安定化を図ります。
事業実施にかかる予算費用
   事業ごとに予算算出の基礎に掲載しております。
データヘルス計画における個人情報の取扱い
   個人情報保護については、データヘルス計画の策定・実施に当たって、活用するデータの種類や活用方法が多岐にわたることから、「健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」及び各種法令・ガイドライン等、また個人情報保護管理規程等に基づいて適切に保護管理いたします。
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